葛西臨海水族園 海鳥+ペンギン完全ガイド

葛西臨海水族園とは
東京都江戸川区の東京湾沿いにある葛西臨海水族園は、マグロの群泳や世界の海の生き物で有名ですが、実は海鳥とペンギンの展示も見逃せません。
ここでは、日本国内で観察できる機会が非常に限られたウミガラス(オロロン鳥)やエトピリカ、さらにフンボルトペンギンとフェアリーペンギンを間近で観察できます。
海鳥展示の魅力
ウミガラス(Common Murre)
- 分類:チドリ目・ウミスズメ科
- 特徴:黒い背中と白いお腹。夏羽は顔が黒く、冬羽は顔に白が入る。
- 生態:空も飛べる海鳥。海中では翼を羽ばたかせて泳ぎ、潜水が得意。断崖絶壁にコロニーを作り、卵は洋ナシ型で転がりにくい形をしている。
- 子育て観察:親鳥が小魚をくわえ、ヒナに直接渡す姿が見られることも。

エトピリカ(Tufted Puffin)
- 分類:チドリ目・ウミスズメ科
- 特徴:夏羽では頭に長い飾り羽が伸び、オレンジ色のくちばしが映える。冬羽では飾り羽がなくなり落ち着いた姿に。
- 名前の由来:アイヌ語で「美しいくちばし」を意味する“etu-pirka”から。
- 観察ポイント:ペアでくちばしをこすり合わせる求愛行動や、泳ぎの速さ。

オレンジ色のくちばしがとても可愛らしいです。
ペンギン展示の魅力
葛西臨海水族園のペンギン展示エリアでは、世界の4種のペンギンが観察できます。中でも注目は、世界初の人工繁殖に成功したミナミイワトビペンギンです。フォークランド諸島やアルゼンチン、チリ周辺に生息する絶滅危惧種で、2016年から続く研究の成果として、2025年には3羽のヒナが誕生しました。この成果は国内のペンギン保全において歴史的な一歩です。
また、堂々とした姿が魅力のオウサマペンギンも展示。体長90cm前後の大型種で、鮮やかなオレンジ色の首元と優雅な立ち姿は圧巻です。
展示形態について
夏の暑さ対策や繁殖への取り組みのため、ミナミイワトビペンギンとオウサマペンギンはモニターを通した展示となる時期があります。屋外展示の中止・再開は公式ニュースページで案内されますので、来園前のチェックがおすすめです。
フンボルトペンギン(Humboldt Penguin)
- 生息地:南米チリ・ペルー沿岸
- 特徴:胸の黒帯模様が目印の中型ペンギン。
- リングの役割:翼に色の組み合わせリングを付け、個体識別と健康管理を行っている。

泳ぐ姿が間近で

フェアリーペンギン(Fairy Penguin)
- 特徴:世界最小のペンギン(体長約30cm)。小柄ながら成鳥で、俊敏に泳ぐ。
- 注意点:「赤ちゃんペンギン」と間違われやすいが、立派な大人。フンボルトペンギン(約45cm)と比べると大きさが際立つ。

よちよち歩きますが、立派な大人です。
海鳥とペンギンの違い
- 海鳥(ウミガラス・エトピリカ):空も飛べる。翼は水中と空中の両方で使用。
- ペンギン(フンボルト・フェアリー):飛べないが水中での推進力が高い。翼は泳ぐために特化。
- 比較ポイント:羽の構造、体型、潜水方法、行動パターンが異なるため、同じ施設内で比較すると理解が深まる。
繁殖期と行動の見どころ
- ウミガラス:夏羽になると顔が黒くなり、繁殖期には断崖に集団営巣。
- エトピリカ:春から夏にかけて飾り羽が伸び、求愛行動が活発に。
- ペンギン:換羽期は羽毛が抜け替わるため水に入らず、じっと過ごす姿も観察可能。
ヒナを子育てするウミガラスの親鳥の姿が見られました。


卵を温める様子がライブカメラで
世界初!ミナミイワトビペンギン人工繁殖成功
葛西臨海水族園は、世界で初めてミナミイワトビペンギンの人工繁殖に成功しました。
ミナミイワトビペンギンはフォークランド諸島やアルゼンチン、チリ周辺に生息し、**絶滅危惧種(IUCNレッドリスト:危急種)**に指定されている希少なペンギンです。国内でも飼育個体数が減少しており、繁殖の難しさが課題となっていました。
水族園は2016年から人工繁殖の研究をスタート。採取した精液を冷蔵・冷凍保存する技術や、血液検査や超音波による産卵予測、専用注入器の開発など、様々な工夫を積み重ねました。その結果、2024年に冷凍精液を使った人工授精でヒナが誕生し、2025年5月には3羽のヒナが孵化しました。
この成果は国内のペンギン保全において大きな前進であり、今後の野生個体群保護にもつながると期待されています。
訪問時には、ぜひミナミイワトビペンギンの展示をチェックしてみてください。
◎「SEA LIFE NEWS」2025年8月号(123号)(PDF)
◎どうぶつえんデジタルライブラリー「SEA LIFE NEWS」(Webページ)
環境問題と保全の取り組み
- 漁業の混獲:世界で年間40万羽以上の海鳥が漁網にかかって死亡。
- 外来生物の影響:ネズミやネコが繁殖地の卵やヒナを捕食。
- 海洋ごみ:プラスチックの誤食による被害も深刻。
葛西臨海水族園では、展示を通じてこうした課題を知ってもらう活動を行っています。
スポットガイドとエサやりタイム(最新情報)
スポットガイドでは、飼育スタッフや解説スタッフがテーマの生き物について詳しく解説してくれます。エサの時間(※)には、スタッフの説明を聞きながら、生き物がエサを食べる姿を観察できます。所要時間は各回約10分です。
生き物 | 開始時間 | 集合場所 |
---|---|---|
ペンギン | 10:30※ / 12:30 / 15:00※ | ペンギンの生態 |
海鳥 | 11:45※ / 16:00※ | 海鳥の生態 |
マグロ | 12:00 / 14:30※ / 15:30 | 大洋の航海者 マグロ |
サメ | 14:00 | 世界の海エリア入口 |
ウミホタル | 16:15 | 発光生物 |
※印はエサの時間です。
※ペンギンのスポットガイドは、2025年8月31日(日)まで中止しています。
観察・撮影のおすすめポイント
ポイント | 種類 | おすすめ時間 | 見どころ |
---|---|---|---|
水槽中央前面 | 海鳥 | 午前10時台 | 活発に泳ぐ姿と潜水シーン |
岩場付近 | エトピリカ | 午後 | 飾り羽が光を受けて映える |
水槽左側 | ウミガラス | 開園直後 | 羽繕いと水面での休憩 |
エサやり時 | 全種 | 上記時間 | 捕食シーンを連写 |
訪問のまとめ
葛西臨海水族園は、海鳥とペンギンを同じ施設で比較できる数少ない場所です。
解説パネルやスポットガイドを活用すれば、生態や環境問題まで深く学べる体験になります。
写真や動画を撮る際は、反射を避ける位置や時間帯を意識すると、より鮮明な姿を記録できます。
また、今回は見ることができませんでしたが、秋以降にはオウサマペンギン、ミナミイワトビペンギンも見られるようです。
施設概要
所在地
〒134-8587
東京都江戸川区臨海町6-2-3(葛西臨海公園内)
アクセス
- JR京葉線「葛西臨海公園駅」から徒歩約5分
- 首都高速湾岸線「葛西IC」から約5分(駐車場あり/有料)
開園時間
9:30〜17:00(最終入園は16:00まで)
休園日
水曜日(祝日や都民の日の場合は開園し、翌日休園)
年末年始(12月29日〜1月1日)
入園料(一般)
- 大人(高校生以上):700円
- 中学生:250円(都内在住・在学の中学生は無料)
- 小学生以下:無料
公式サイト
葛西臨海水族園 公式ページ